『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
2015/6/12(Fri)@イオンシネマ海老名
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
ニコラス・ジャコボーン
アーマンド・ボー
アレクサンダー・ディネラリス・Jr
製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アーノン・ミルチャン
ジョン・レッシャー
ジェームズ・スコッチドポール
製作総指揮:クリストファー・ウッドロウ
出演者:マイケル・キートン
ザック・ガリフィアナキス
エドワード・ノートン
エマ・ストーン
エイミー・ライアン
音楽:アントニオ・サンチェズ(英語版)
撮影:エマニュエル・ルベツキ
編集:ダグラス・クライス
スティーヴン・ミリオン
製作会社:リージェンシー・エンタープライズ
ワールドビュー・エンターテインメント
配給 米:フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
日:20世紀フォックス映画
<あらすじ>
俳優リーガン・トムソン(マイケル・キートン)は、かつて『バードマン』というスーパーヒーローを演じ一世を風靡したものの、シリーズ終了して20年経った今ではすっかり落ち目となってしまった。彼はレイモンド・カーヴァーの小説『愛について語るときに我々の語ること』を自ら脚色・演出・主演を手がけ舞台化、ブロードウェイで上演し、再び喝采を浴びようとする。しかし起用した実力派俳優のマイク・シャイナー(エドワード・ノートン)ばかりが注目される上に、娘サム(エマ・ストーン)との溝も深まる一方。リーガンは精神的に追い込まれていく……。(Movie Walkerより抜粋)
予告編。2015年アカデミー賞最多4部門受賞ですね( 作品、監督、脚本、撮影)。まあ、そんなの関係ない!面白くないものは面白くないし!という気持ちでいつも観賞にのぞんでます。いや、違うな。別に何も考えないですね。
映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』日本版予告編 - YouTube
★★★★★★★★★★(10点)
連続10点出ちゃいましたよ。しかもバードマンカラーです。近年では『ゼロ・グラビティ』を観た時の感覚ですね。新しいもの観たというか…。この日、イオンシネマ海老名21:05の回を逃したら、神奈川ではもう新作として観れなかったので、最後の最後に(若干熱があったけど無理して)行って良かったよ…。
タイトルクレジットで「はい傑作決定ー」っていう…
ほんと早すぎですが、オープニングの洗練されたタイトルクレジット。これでもう持ってかれました(笑)タイトルクレジットのカッコよさと映画全体の出来はほぼ同じですよね多分!『サイコ』、『ファイト・クラブ』、『007スカイフォール』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』…邦画では『愛のむき出し』、『真夏の方程式』とか、最近では『龍三と七人の子分たち』とかかなあ。
本作の場合、特筆すべきはストーリーの合間に挟みこむパターンではなく、冒頭にやっちゃうんですよね。これにはわかりやすい理由がある。僕のような素人でも簡単気づきます。クレジットの後は、もう「止まらない」んですから…まじで…。
撮影技術
「止まらない」というのはスピード感の例えとしてでははない。「全編ワンカット長回し」に見える撮り方をしているのです!決して密室劇ではないですよ本作は。主人公のリーガンは楽屋、舞台、酒場、街・・と様々な場所に現れるし、リーガンを取り囲む登場人物たちのそれぞれの物語もきちんと描写されてます。更にリーガンは、かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」の主役として世界的スターだった過去をトラウマとして抱えている。そのバードマンが現在のリーガンの前に現れ、問いかけるSFシーンが随所にあり…。「それらがワンカットで成立する??」って思ったなら是非観て確かめて欲しいですね。
「結局、人生とは長回しのようなもの。人は誰でもそれぞれの現実に捕われている(アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督)」(劇場プログラムより抜粋)
観賞後にこの言葉を目にした時本当に胸が熱くなりました。映るシーン、聞こえる言葉ではなく「魂を込めた技術」で感動を生み出してます!凄い!と、ひたすら興奮していたら、撮影監督のエマニュエル・ルベツキは2年連続アカデミー賞撮影賞。つまり『ゼロ・グラビティ』もこの人なんです!で『ゼロ・グラビティ』も全編ワンカット長回しでいこうと思ってたんだって!
音楽
~劇場プログラムより抜粋~
かつてルイ・マル監督は「死刑台のエレベーター」において、ラッシュを流しながらその場でマイルス・デイヴィスに即興演奏をつけさせるというトリッキーな試みを見事に成功させたが、本作におけるサンチェスのスコアは映画音楽の歴史においてはそれと同等かそれ以上の偉業といってもいいだろう。なにしろ、前もって60本のトラックが録音されたというサンチェスのドラム・ソロは、単なるスコアとしての役割を超えて明確な編集点を持たない本作においてカメラの動きやシーンの流れの”指針”となったのだから。(文=宇野維正)
全編にわたってドラムのみのトラックでありながら、そう思えないほど豊かなバリエーションに感じました。シーンと重ねることによって生まれた相乗効果?ドラムそのものの力?両方でしょうね。まあクールですよ。
ここでジャズミュージシャン、文筆家の菊地成孔さんのバードマン評を参照されたい。
Q クレジットには「ドラムスコア」とあります。あなたは作曲家でもありますが、本作での演奏に、作曲の要素はありますか?
<サンチェス氏の解答要約> 「即興と作曲は、私の中では区分されない。即興はリアルタイムの作曲だよ」
これは菊地さんがサンチェスさんにインタビューした際のQAですが、やっぱりそうなんですね。120%音楽として成立してるドラムのみの音。これはサントラ買いますよ。
- アーティスト: サントラ,ヴィオレッタ・ウルマーナ,ロンドン・オペラ・コーラス,ステファノ・セゲードニ,ポーランド国立放送交響楽団,ボザール・トリオ,リヨン歌劇場管弦楽団,シュトゥットガルト放送交響楽団,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,アントニオ・サンチェス,ジョン・アダムス
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2015/04/22
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傑作です。映画史更新でしょうか。
言わずもがなですが演者にも一応触れておくと、舞台本番中に「本番」しようとするエドワード・ノートンのろくでなしっぷりも最高に刺激的だったし、いかにも正しいことを言っている気(げ)なエマちゃんのSNS世代アイコン的な演技も説得力ありました。そして主演マイケル・キートン。かつて「バットマン」だったという現実とのリンク(ここを推す宣伝結構見かけますね)は『アイアンマン』のロバート・ダウニーJrほどは感じなかったですね。むしろそこって、この作品に関してはノイズじゃないかなって思いました。ただただ演技が素晴らしいので。
「かつての輝きをもう一度掴みたい」「輝いたことはないし若さも無いけど、もう一度何かをがんばってみたい」そういう人たちに向けた映画であることは間違いないし、しかも笑えるところは容赦なく笑えるんですよね。それを世界最高技術で撮っちゃったわけですから大傑作でしょうやっぱり。アカデミー!これを作品賞にするあたり、まだ捨てたもんじゃないな!
ラストのシーンについてみんなで話しましょうよ。6/14現在、都内では池袋と品川でまだやってますよ!歴史に残る映画かも知れませんので是非!
<参考リンク>