shinkato vs. the world

日記とかを不定期に書きます。

『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』

2015/6/7(Sun)@TOHOシネマズららぽーと横浜

 

 

<スタッフ>

  監督:テイト・テイラー

  脚本:ジェズ・バターワース 、 ジョン=ヘンリー・バターワース
  エグゼクティブプロデューサー:ピーター・アフターマン トリッシュ・ホフマン 、 ジェズ・バターワース 、 ジョン=ヘンリー・バターワース 、 ジョン・ノリス 、 アンナ・カルプ

  プロデューサー:ミック・ジャガーブライアン・グレイザーテイト・テイラー 、 ビクトリア・ピアマン 、 エリカ・ハギンズ
  撮影:スティーブン・ゴールドブラット
  プロダクション・デザイン:マーク・リッカー
  音楽製作総指揮:ミック・ジャガー
  音楽:トーマス・ニューマン
  ニューミュージック・アレンジ:THE UNDERDOGS
  ニューミュージック・プロデュース:THE UNDERDOGS
  編集:マイケル・マカスカー
  衣装:シャレン・デイヴィス
  ストーリー構想:スティーブン・ベイグルマン 、 ジェズ・バターワース 、 ジョン=ヘンリー・バターワース
  音楽スーパーバイザー:バド・カー、マーガレット・イェン

<キャスト>
  ジェームス・ブラウン・・・チャドウィック・ボーズマン
  ボビー・バード・・・ネルサン・エリス
  ベン・バード・・・ダン・エイクロイド
  スーザン・ブラウン・・・ヴィオラ・デイヴィス
  メイシオ・パーカー・・・クレイグ・ロビンソン
  ハニーおばさん・・・オクタヴィア・スペンサー
  イヴィンヌ・フェア・・・ティカ・サンプター
  ディーディー・ブラウン・・・ジル・スコット
  ジョー・ブラウン・・・レニー・ジェームズ
  シド・ネイサン・・・フレッド・メラメッド
  ラルフ・ベース・・・ジョシュ・ホプキンス
  ヴィッキ・アンダーソン・・・アーンジャニュー・エリス
  リトル・リチャード・・・ブランドン・スミス
  ピーウィー・エリス・・・タリク・トロッター
  ナフロイド・スコット・・・アロー・ブラック
  ベビー・ロイ・・・キース・ロビンソン
  ミック・ジャガー・・・ニック・エヴァスマン 

予告編。ゲロンナッ。


映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』予告編 - YouTube

 

 ★(10点)

 

 いやー立ちあがって良い映画館、どっかにないかなあって感じですよほんと。最高でした!

※以降、映画の内容に言及する部分が多々ありますが、この映画はネタバレとか関係ないと思いますので未見の方も構わず読んでいいと思います。

  • JBの凄さ、魂の継承

 「ソウル・ブラザーNo.1」「ミスター・ダイナマイト」「ショービジネス界一の働き者」「ゴッド・ファーザー・オブ・ソウル」「セックス・マシーン」「ファンクの父」この別名の数々を見ただけで圧倒されますが、日本人の大半は違和感があるんじゃないでしょうか。「そんなにすごい人?」って。しかしながら、JB以降、世界のポップミュージックシーンの第一線で活躍している人々の中で「JBの影響下にない」と断言できる人はいないのかもしれないです。それは数字としても証明されており、JBが作った曲が現在に至るまでにサンプリングされた回数がなんと3505回!多すぎてよくわかりませんが(笑)

  そして以下リンク。

 JBという幹からのびる信じられないくらい大きな3つ枝「マイケルジャクソン」「RUN DMC」そして「ローリング・ストーンズ」。本作の序盤、若き日のTVショウ収録時にトリがローリング・ストーンズ、トリ前がJBという順番でひと悶着が起きるという場面があります。JBのパフォーマンスを舞台袖から見つめるミック・ジャガーの体が次第に動き始めるというくだり。同じ時代を駆け抜けた者同士しかわからない「何か」がそこに映ってるわけですが、そのミック・ジャガーが本作の音楽製作総指揮。魂入れないわけがないですよね!

 

  • 生まれるべくして生まれた「ファンク」

 JBが台頭してきた1960年代中盤~後半のポップミュージックはシュープリームシュ「BABY LOVE」のような「メロディー」が重要視されてるものがと、「リズム」への期待はビートルズに代表されるバンドサウンドが一手に引き受けているという印象です。このころモータウンに代表されるソウルミュージックの台頭も著しいですがこれもメロディー重視といって良いでしょう。そんな中でJBは「俺のファンは99%黒人」と自覚しながら、自らのルーツに忠実な野性的リズム重視のサウンドで勝負するわけです。結果的にそれは成功します。ただ、そこには戦略なんてない。あるのは魂だけなんですよ。JBの音楽はアフロ・アメリカンの圧倒的支持はもちろん、先見の明を持つ音楽業界のスタッフの目にも比較的容易に止まりました。JBのレコーディングを見つめるレコード会社の偉い人「この歌、サビはいつくるんだ?」スタッフ「や、これはそういうんじゃないんです」っていう笑えるエピソードも劇中にもりこまれてます。「JBの中には音に対する明確な答えがある。じゃあ、それをどうバンドに伝えるか?」リハーサルのシーン。これまた最高なんですが、JBの理想とほど遠い演奏をしていたギターに対し「おい、お前が今持ってるのは何だ?」ギター「?」JB「だからお前が弾いてるのはなんだ!?」ギターさん「(JBが求めてる答えはうっすら感じてる)・・・ドラム?」JB「そうだドラムだろうが!」JB「じゃあお前!(別のホーン担当に向けて)お前が弾いてるのは何だ?」「・・・ドラム?」「そうだ!ドラムだよ。よしいくぞ!」みたいな。全ての音をパーカッシブに、叩きつけるように演奏する。自身のルーツミュジックに現代の音を乗せることで、繰り返しのリズムが持つ中毒性を更に発展させた、大衆にとってはまさに「未来の音楽」を作り上げたJB。もうあとは時代の追いつき待ち。こうしてファンクミュージックが生まれたっていう感じでしょうか。

 

  • 映画として

 っていうJBの凄さを知ると「いやーこの時代にいたかったわ俺!」ってなりますが、はい、観れば体験できますね間違いなく。ただ「JBの人生を映画化すれば、それを体験できる」ってわけじゃなかったと思う。ミック・ジャガーを先頭に彼を敬愛して止まないスタッフの魂が作品に注入され、そしてそれを受け止めたチャドウィック・ボーズマンがJBをまさに「体現」したことで最高にエキサイティングな作品が生まれたのだ思います。

 注目の数あるライブシーン、鑑賞後に本物と見比べてみましたが、やはりJB本人の方が本能的というか衝動的というか、インパクトはありますね。しかし、ぶっちゃけですね、「型」としてはチャドウィック・ボーズマン版JBの方がかっこいいです(笑)つまりこの本作は「JB入門編」としてもお勧めできますね。ほんと立ち上がりたくなりますよ。JBファンの間では伝説となっているパリ公演は、明らかに作り手側も意識して長尺でやってくれます。キレッキレですから。

 しかしながらこの作品の本筋はやはり「人間JB」にスポットを当ててるというところがほんと偉い。貧困、音楽、野心、孤独、別離、友情・・・JBの人間性が垣間見えるエピソードがたくさん盛り込まれているのでほんと好きになりますよ。女にだらしなく、自分勝手な行動で周囲を困惑させるJBが、キング牧師暗殺直後、反対を押し切って(黒人たちの暴動を恐れて中止が濃厚だった)決行したライブで案の定トラブル発生。その時にJBが発した言葉とか、かなりグッときましたね。

 とにかく劇場で観ないと面白さ半減。音楽にさほど興味がない人だって観れば面白いです!すべての人に伝わる紛れもない「いい映画」です。

 

参考リンク

 細田日出男と宇多丸 ジェームズ・ブラウンの偉大な功績を語り合う

米国ビルボード1958年,年度ランキング(洋楽データベース)