『WILD STYLE』
2015/7/19@横浜ジャック&ベティ
<作品データ>
原題:Wild Style
製作年:1982年
製作国:アメリカ
配給:アップリンク
日本初公開:1983年10月8日
上映時間:82分
オフィシャルサイト<あらすじ>
1982年、ニューヨーク、サウス・ブロンクス。グラフィティライターのレイモンドは、深夜に地下鉄のガレージへ忍び込み、スプレーで地下鉄にグラフィティを描いていた。レイモンドのグラフィティはその奇抜なデザインで評判を呼んだが、違法行為のため正体を明かせずにいた。もちろん、恋人のローズにも秘密だ。ある日、彼は先輩のフェイドから新聞記者ヴァージニアを紹介される。これまでに何人ものアーティストを表舞台に送り出してきたバージニアから仕事の依頼が舞い込むが、仕事として描くことと自由に描くことの選択に思い悩む…。(劇場プログラムより)
<スタッフ>
監督:チャーリー・エーハーン
製作:チャーリー・エーハーン
脚本:チャーリー・エーハーン
撮影:クライヴ・デイヴィッドソン、ジョン・フォスター
音楽:クリス・スタイン、フレッド・ブラズウェイト
<キャスト>
リー・ジョージ・キュノネス
サンドラ・ピンク・ファーバラ
パティ・アスター
ファブ・5・フレディ
ビジー・ビー
グランドマスター・フラッシュ
ラメルジー
予告編。
★★★★★★★☆☆☆(7点)
1983年に日本公開された本作が、今年春先に都内でリバイバル上映され、ついに横浜にも来ましたよ(^O^)
ヒップホップの四大要素「ラップ」「DJ」「ブレイクダンス」「グラフィティ」。今となってはそれは揺るぎない「定義」としてあるわけですが、そのそれぞれの要素がそれぞれの別なタイミングで生まれ、それぞれが必然であるかのように集まって「ヒップホップ文化」として生まれた瞬間。それが収められているドキュメンタリーという意味で『WILD STYLE』は大変重要な作品として位置づけられています。
この映画の功績は大きい
1980年代初頭のサウス・ブロンクス。都心の荒廃により、黒人の若者たちは有り余るエネルギーの矛先を暴力や犯罪に向けるしかなかった。そんな中で彼らが獲得した表現方法。それが後に全世界を席巻するなんていったい誰が予想できたでしょうか。そうなった要因の一つとして、この映画の功績は非常に大きいと言えます。「グラフィティ・ライター、DJ、MC、Bボーイ等、新しいアートの形を生みだした人物たちを通じてヒップホップカルチャーの台頭を描きたかった」監督チャーリー・エーハーンのこの言葉通り、ヒップホップという統合的な文化、それを構成する要素を明確に定義したことで『WILD STYLE』は全世界へプレゼンする為の名刺代わりとしてはこれ以上ない作品となり、ヒップホップは全世界へ波及していったのではないでしょうか。因みにライター、翻訳家、DJの荏開津広さんによると、「ラップ」「DJ」「ブレイクダンス」「グラフィティ」をまとめて撮ろうと言ったのは劇中にも登場するファブ・ファイブ・フレディのアイデアという説もあるようですね。
全世界へ波及する‥ロマンありますよね・・・
そのヒップホップ文化が海を渡り、世界各国、そして日本に伝わり、現在に至るということを思うと、大変エキサイティングで、感動的ですよ。こういう「文化が生まれた瞬間」が、映像として収められているものって他にあるんでしょうかね?
ラストのライヴシーン、日本のヒップホップファンなら「さんぴんcamp」を連想するのではないでしょうか。劇中のそれは1982年なのでそれから約14年後の1996年7月7日。日本で初めての大規模ヒップホップイベントが、開催されたわけですが、その会場が「日比谷野外音楽堂」だったのは『WILD STYLE』の影響があるんですかね?似てますよね!
ドキュメンタリーとして必見ですね
因みに、劇映画としては、なかなかの珍品だと思います(笑)。ゾロ君に「いくら必要?」と色仕掛けで迫る熟女のスポンサーが「サラサラ‥」と小切手に金額を書くシーンは、ほんとにサラサラって感じで、実際書いてないのが見えてたりします(笑)。
あと、あらすじを見て連想したのは『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』ですね。こちらはバンクシーのドキュメンタリーですが、彼のスタイルもヒップホップが影響していることは間違いないですよね。
<参考>
劇場プログラム