『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
2015/6/29(Mon)@イオンシネマ海老名
※イオンシネマは見逃した新作を安くやってくれてることに気づきました!これは嬉しいです。
<あらすじ>
ロサンゼルスにある一流レストランで総料理長を務めているカール・キャスパー(ジョン・ファヴロー)は、メニューに口を出すオーナー(ダスティン・ホフマン)と対立し店を去る。次の仕事について考えなければならない中向かったマイアミで、絶品のキューバサンドイッチと出会う。別れた妻(ソフィア・ベルガラ)や息子(エムジェイ・アンソニー)、友人(ジョン・レグイザモ)、と協力し合い、フードトラックでのキューバサンドウィッチの移動販売を始めるカール。行く先々でサンドウィッチを作りながら、原点に戻り料理や生きる上での情熱を取り戻そうとする……。(MovieWalkerより抜粋)
<スタッフ>
<キャスト>
カール・キャスパー ・・・ジョン・ファヴロー
マーティン・・・ジョン・レグイザモ
トニー・・・ボビー・カナヴェイル
パーシー・・・エムジェイ・アンソニー
モリー・・・スカーレット・ヨハンソン
リーヴァ・・・ダスティン・ホフマン
アイネズ・・・ソフィア・ヴェルガラ
ラムジー・ミシェル・・・オリヴァー・プラット
ジェン エイミー・セダリス
マーヴィン・・・ロバート・ダウニー・Jr.
フローラ・・・グロリア・サンドバル
マイアミの警官・・・ラッセル・ピーターズ<公式サイト>
予告編。空腹での鑑賞は注意です。美味そう過ぎて最後までもたないかもしれないですよ!
★★★★★★★★★☆(9点)
万人にお勧め出来ますが、『アイアンマン』のジョン・ファブローっていう文脈で観ると、更にグッときますね。
ジョン・ファブローという男
シカゴの有名なセカンドシティ・コメディ・クラブで学んだ経験を生かし、ファブローはロバート・ダウニー・Jr.と協力してスーパーヒーロー映画では滅多に見ることのない、生き生きとした冗談のやりとりを『アイアンマン』『アイアンマン2』に加えた。(劇場プログラムより)
それまでの00年代アメコミヒーロー映画は「リアルさ=シリアス」というアプローチが主流(それが悪いとは言わないがノーランのせいでしょう)だったわけですが『アイアンマン』のまあ卑屈にならない感じというのでしょうか?カラッとした感じというのでしょうか?『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観た時「マーベルっぽくて最高」と思いましたが、この「マーベルっぽさ」は2008年『アイアンマン』でジョン・ファブローが決定づけたのではないでしょうか。だとするとなんという偉大な功績でしょうか!
その歴史を作る布石として「波瀾万丈のキャリアがキャラクターに深みを与える」と、当時すでにおっさんのロバート・ダウニー・Jr.をゴリ押しでアイアンマン役に抜擢したのも偉い。本来なら政治的要素で若手のホープ俳優が起用されるでしょうが、今となっては彼以外のアイアンマンは考えられないしね。神懸かり的にGJですよ。
とまあ2008年前後のファブローはヤバかったわけですがその後は決して順風満帆ではないようです。アイアンマンシリーズを大成功に導きながらも「3」の監督まさかの降板。その理由としていたディズニー作品の製作もその後は音沙汰無し。更に「カウボーイ&エイリアン」の大コケ等、紆余曲折を経た後、ビック・バジェット作品から一旦身を引き、本作『シェフ』の製作に着手するわけです。
そんなジョン・ファブローの状況(ビック・バジェット→色々あって自主製作)と本作の主役カール・キャスパー(老舗レストラン→色々あって屋台)は観ている側も重ね合わさずにはいられないし、事実、ファブローも「これは自分自身でもある」的なことをインタビューで言ってます。
サラリーマン必見。ファブローが主人公に投影したもの
ジョン・ファブローがカール・キャスパーに思いを重ねる部分は「自身の思いとそれを取り巻く状況との摩擦。それによって生まれる葛藤」と「良い物を作って、お客さんに喜んでもらいたいという気持ち」の二つだと思いました。つまりこの映画は「ファブロー版社会との折り合いの付け方」という極々私的な物語なわけですが、そのテーマは自分に置き換えてみると、まさに「shinkato vs. the world」であり、それは少なからず誰もが心情面で重なる部分があるでしょう。僕は深く深く感情移入してしまいました。
例えば僕は毎日会社に行って、一日の大半を仕事に費やしているわけですが、そんな膨大な時間や作業量のなかで、自分の「思い」が目に見える形として長い間残っているものが今までいくつあっただろう?なんて考えてしまいました。こんな僕でも作品序盤で語られる「葛藤」に似た場面はいくつも経験をしているつもりですが、正直「妥協」での見た目上の解決が大半を占めています。そっちの方が楽だし、サラリーマンである以上、個人の思いは二の次なわけですから。
じゃあ、この映画は、自分自身の思いを形にして勝負してる人たち(いわゆるクリエイター)に向けた限定的な物語であり、自分にとっては関係のない話なのか?この映画を観た後、そうではないと思いました。「サラリーマンであること」や「妥協は必要」という揺るぎない現実はあるとして「お客さんに喜んでもらえる為に全力を尽くす」という部分はすごく前向きに自分の中の仕事の意義として湧き上がってきましたね。たとえ、形として残る仕事でないとしても、「喜んでもらいたい」という気持ちで取り組むことは映画の中のカール・キャスパーや、作品に思いを込めたジョン・ファブローと同じなのではと思いました!息子に叱るシーンとか自分が叱られてる気になって熱くなりましたよ(笑)
とか書いてみましたが・・
物語の内部に潜んでいるものをクローズアップしている書き方をしてしまいましたが、本来この映画を簡単に説明するなら「調理シーン」と「音楽」が最高です。特に調理シーン、カールがスカヨハ(やはりエロいです)の為に作るペペロンチーノだったり、息子の為に作るクロックムッシュ、訪れる土地の名物に合わせてアレンジされるキューバサンド‥お腹がすいてしょうがないです。
そして音楽、この映画全編にわたって「どんなに苦境に立たされてもポジティブさは決して失わない」という雰囲気で溢れているのですが、それを手助けしているのが音楽でしょう。まあ身体は動くし、腹は鳴るし、どうしようもないです(笑)
Quantic & Nickodemus Feat. Tempo & The ...
そしてラストシーンの解釈ですが、例えば今僕がこうして映画の感想を書くことの意味について少なからず言及しています。「批評」の意味だったり、批評する側の心情であったり。最後のオチでああなることは必然というか、あるべき姿だと思いましたよ僕は。あとは、SNSの良い部分と悪い部分を中立的に描いているのも上手いですね。子供のファインプレーとか。
若干、あっさり風味なので9点にしてみましたが、自分にとってはとても重要な作品です!何回も観たいです!
<参考>
劇場プログラム